数字が強い。今の時代、いや人間の歴史上ずっとかも知れないけど、数字が強い。

数こそ正義。内容を調べれば全然違うことも多いし、なんだかなってこともたくさんあるけど、数取っちゃえば勝ち。勝てば官軍。

そんなだから、兎に角みんな数を欲しがる。

高評価、チャンネル登録、いいね、星いっぱいのレビュー。

数の稼ぎ方は問わない。著名人に頼ろうが、裏から手を廻そうが何しようが、表に出る数が重要。何か買うとき、観るとき、どこか行くとき、何か行動を起こすとき人はその数字を参考にする。

そして自分が気に入ったものの評価や数字がイマイチだと、自分の気持ちを捨てて、数字に従ってしまう。

そんなだから数を持つものはいや増して富み、数を得られぬものはいくらそれが良い物であろうと落魄の憂き目を見る。

良いものを見分ける目は身に付かないかも知れないけど、好きなものを感じる心は誰にもあるのだろうから、好きなものに正直に生きていきたいものだ。

と思うが、外食の際には店選びで高評価の店を探す。だってたまの外食じゃない、失敗したくないもの。ネットで何か買うときには、星いっぱいの評価が付いたものを探して買う。だって少ない小遣いから捻出して買うんだもの、失敗したくないじゃない。

これは、自分の行動と言えるだろうか?

己の感性よりも数字を信じ、多数の流れに翻弄される人生。それおもろいの?

とはいえ数字はとても強い。その影響の埒外に生きることはとても難しい…。

 

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「人数の町」 2020年 日本

監督 荒木伸ニ

社会不適合者を集めた町。

妙なルールはあるが、衣食住を保証された暮らし。

彼らを数として使い、利益を得る何らかの組織。

設定はすごく面白くて、物語の展開を楽しみに観たが、思ったような盛り上がりは無かったか。

 

 

 

俯瞰して

 

仕事上のことでふたりのおっさんが言い争っている。聞くともなしに聞いていると、やり方の違いでもめているっぽい。しかし、聞いた感じ

どちらのやり方を採用したとしても、時間内に出来る量ではない。それを分かっているのかいないのか知らないが、お互い感情をむきだして言い争っている。この場合、怒りの矛先は無茶な量の仕事を割り振ってきた会社に向けるべきで、目の前の個人ではない。むしろ協力して、会社に異議を申し立てるなりするべきだと思うが、人間、そう上手くは感情をコントロールできない。

何か問題が起こったときに、一歩引いて、俯瞰で全体を見渡し、その問題の本質はどこか?なんてことを考えられる人などそうそういない。

やはり目の前のことに、人は意識の大半を奪われる。

言い争いの果てに、何があるんだろう。

仮にその仕事が上手くいったとて、その指示を出した人間が仕事上の評価を得るだけで、そのまた上司の手柄になり、そのまた…と最終どこの誰だか分からん資本家の懐が潤う。

つまらんことだが、それで日々の活計を得ているのだから、真面目にやることは当たり前だが、感情まで持ち込む必要はない。そんな熱量があるのなら、プライベートで使いたい。そんなふうに自分は考えてしまうので、仕事で感情的になっている人を見ると、理解は出来るが、少し不思議な感じも残る。

目の前にしか現実はないのだから、目の前の問題に対してエモーショナルなのは良いことなんだろうきっと。

真実もまた目の前にあるものだろうけど、その本質は違ったところにあることが多いから、いつまでも謎が残る。どんな些細な問題でも人間が完全に理解できるものなど一つもない。

どうしたって謎が残る。しかも大部分。

 

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「フロッグ」 2021年 イギリス

監督 アダム・ランドール

ある町で二人の少年が行方不明になる。失踪現場には昔あった連続誘拐殺人事件の犯人が犯行現場に残していった緑のナイフ。

事件の担当刑事の家で起こる不可解な現象。

刑事の家庭も妻の不倫で崩壊危機。刑事はメンタルやらてるわ、息子は荒れるわ。

問題がいっぱいだ。

 

 

それぞれ

一寸先は闇。といわれても、どことなく薄暗いところをずっと歩いている気がしているから、急に暗くなったところで、多分それほど驚きはない。薄闇にいたことで、闇にもすぐに目が慣れ、それほど変化なくやれそうな気がする。

それよりは光に出くわした方がきっと驚く。突然の眩さに目が眩み、目が慣れるまでに時間がかかりそうだ。

光を目指して進む。

闇から逃げるために進む。

どちらもベクトルは同じだけど、そのメンタリティは大きく違う。

しかしどちらも進んでいる、または進む意志がある。

そのどちらでもなく、光も闇も座して待つのみの自分などまずは論外。

進まなくては。でも、どっちへ?

分からないから動けない。

ただ時間だけが、無慈悲に進む。進む。

 

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「明日の食卓」2021年 日本

監督 瀬々敬久

同じ名前の子どもを持つ、三人の母親それぞれの物語。

どこかミステリーの要素も感じさせつつ、目まぐるしく三人の物語が展開し、よくある話をよくある話で終わらせてない感じがして、最後まで飽くことなく観られた。

 

 

違うから

地上波のテレビはほとんど観ないが、数少ない視聴番組のひとつに「家、ついて行っていいですか?」という番組がある。終電を逃した人に声をかけて、タクシー代を支払う代わりに家までついて行って、その人の家の中を軽く探索などしつつ、これまでのことや現在のこと目標や夢なんかを聞くだけの内容なのだけど、これが面白い。一見何事もなく平凡に普通の家庭を営んでいるように見える人たちにも、たくさんの悩みや不安、これまでの紆余曲折、明るい未来、仄暗い未来なんかがあって、「普通」の一言で片付けられる人など一人もいない。

日常、そこらを歩いている、何の気無しにすれ違う人たちに対してすら何事か感じたり考えたりして、世の人に対しての心象や見方が少し変わる。

貧困、病、孤独など凡そ不幸として捉えられる事案にも人それぞれ違った感じ方、対し方があり、人はやはりカテゴライズやラベリングといった下らない色眼鏡で見るべきではないと、この番組を観るたび強く思う。

一見すると不幸に見えて幸せ。幸福そうに見えて不幸。人間に見えているものなんて、本当にほんの少しでしかも表層。

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「おらおらでひとりいぐも」2020年 日本

監督 沖田修一

夫に先立たれ、子どもたちは自立して少し疎遠。孤独な老後を送るおばあちゃんの話。

高齢化の進む現代。こういう生活をしている人がたくさんいるんだろうな。

たくさんいるそんな人たちも皆同じではない。

 

勇気?

今いるブラックな会社は、労基法などに照らし合わせればそれはそれは守れているところを探す方が困難なくらい。それを直す気もないところに腹が立つ。少しくらい改善に向けての動きでもあればいいのだけど、どうも年々酷くなっていってる。日○○鉄というところの下請けのさらに下請け、いわゆる孫請けという工場内でも最弱の立場。だからある程度は腹におさめて、多少の矛盾や無茶振りも耐え忍んでなんとかやってきた。

しかし、どうにも許し難いことが起こった。下請けの会社シマ○ン主導で行われた、詐欺、業務上横領、これらのことを隠蔽している事実。これを直接日○○鉄に訴えでようかどうしようかすごく迷っている。

というのも、その犯罪を犯していた当人たちは、発覚したのち特に何の罰則もなく降格、減給などもなくその犯罪で得た金銭を毎月少しずつ返せば良いという沙汰に留まった。これは日鉄にバレたくないからという理由からだろうけど、日鉄に報告してないなら返金された金はどこに?お前らも同じ穴の狢だよ。

さらに許し難いのは、詐欺発覚から程ないある日、孫請けである我々の会社の人間が事故を起こした。15年働いてきたクセはあるが真面目な人が、その事故一回で、解雇になったこと。

詐欺など働くバカが、仕事もせずにのうのうと未だに何もなかった顔でのさばっているというのに、真面目に働いていた人が事故一回で馘首。犯罪者に何の咎めも無く、真面目な労働者には厳格な処分。

なんだか狂ってないか?普段倫理観とか正義とか考える質ではないけど、流石に狂ってると思う。そういう頭のおかしい奴らの指示で仕事をしているかと思うと、自分のことも信用できなくなる。

迷うことなどないじゃないか、すぐに告発するべきだと思われるだろうけど、そう簡単な話でもない。

これを日鉄に報告すれば、まぁ孫請けの一社員の言うことだ、妄言だろうで片付けられる可能性が高い。仮に話の理解できる人が聞いて、問題になったとしたら、シ○ブンは下請けを切られるだろう。そうなると我々の仕事も無くなる可能性がある。

僕自身はもうここを見限っているから、いつここの仕事が無くなってもかまわないが、ここが無くなると困る人もたくさんいる。彼らの生活は?次の仕事は?と考えると踏み出せない。

といった状況のとき、必要なのは勇気?それとも忍耐?

 

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「トゥルーグリッド」 2010年 アメリ

監督 ジョエル・コーエン イーサン・コーエン

理不尽な理由で悪漢に殺された父。

その復讐に14歳の少女が立ち上がる。

腕利きの保安官を雇い、共に悪漢の跡を追い旅する。

少女の勇気、機転、こんなものが自分にもあればなぁ。

ハートフル

人にはそれぞれ生まれてきた理由がある。とか、それぞれの役割を持って生まれてきた。とか、その人にしか出来ない使命を果たすために生まれてきた。とか。

時折り目にしたり、耳にするこれらの言葉。

本当だろうか。ただの願望じゃないのか。

人間に頑張ってもらわないと困る何かが、本来意味などない人生に何とか理由をつけて希望を抱かせるために考えたお為ごかしじゃないのか。

生まれてきた理由なんて未だに分からないし、役割なんてものも割り振られた覚えはない。

使命など感じたこともない。

ひょっとして皆は分かってるのかもしれない。

気づいてないのは僕だけという可能性もある。

とはいえ、こんなこと面と向かって聞き難い。

「お前の人生の使命って何なの?」とか真顔で聞いたらメンタルの不調か酷ければクスリを疑われる。しかし気になるな。でも聞けないな。

理由も役割も使命にも気づかない残念な人間。という役割を使命として授かったのが、お前の生まれた理由だ。とか言わないよね、誰だか知らんけどそれを司る存在。 

 

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「ハロー⁉︎ゴースト」2010年 韓国

監督 キム・ヨンタク

耐え難い孤独に絶望して、自殺を図るも未遂に終わり、病院のベッドで目覚める青年。

そこから何故か死者の姿が見えたり、声が聞こえたりするようになる。

挙げ句四人の死者に取り憑かれ、それぞれ生前の無念を晴らしてあげないといけないことになる。

最後、心がふるふるする。これぞハートフルコメディ。

 

ゆるいよ

水清ければ魚棲まずとかいう言葉があるように、あまりに品行方正、ルール遵守、正義感のかたまりみたいな人間に人は寄ってこない。

正しさの鎧に守られたその人には、ジョークも通じなければ、甘えも許されない。

ハンドルやブレーキに遊びがない。気が抜けない。

人は隙がない人を好きになりにくい。

隙にも個性があって、隙のない人間には人間味が感じられない。

いくら力んだところで、人間は完璧にはなり得ず、お互いの犯すミスを許し合いながら人間関係というものは熟していくのだと思う。

カリスマとか歴史に名を残すたくさんの人を従えた偉人なんかは、そら凡人を凌駕する何らかは持ち合わせていたんだろうけど、案外といい加減なところも、人としての弱さもあったんじゃないかな。あまりに完璧な人を人は助けようとは思わないんじゃないだろうか。

歴史的な偉人に会ったことはないから、勝手な妄想だけど。

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「新解釈 三國志」2020年 日本

監督 福田雄一

親孝行で真面目、礼儀正しく義に厚く徳が高い。といった固いイメージの劉備像。

この作品の劉備はいい加減でヘタレ、文句ばかりで行動は遅い。いや劉備に限らず登場人物みんな従来の三國志のイメージよりゆるい。

乱世であるはずが、全体に平和な雰囲気。

コメディであるから殺伐とした世界観になりようはないけど、締まるところがなさすぎて、緩さばかりが印象的。