違うから

地上波のテレビはほとんど観ないが、数少ない視聴番組のひとつに「家、ついて行っていいですか?」という番組がある。終電を逃した人に声をかけて、タクシー代を支払う代わりに家までついて行って、その人の家の中を軽く探索などしつつ、これまでのことや現在のこと目標や夢なんかを聞くだけの内容なのだけど、これが面白い。一見何事もなく平凡に普通の家庭を営んでいるように見える人たちにも、たくさんの悩みや不安、これまでの紆余曲折、明るい未来、仄暗い未来なんかがあって、「普通」の一言で片付けられる人など一人もいない。

日常、そこらを歩いている、何の気無しにすれ違う人たちに対してすら何事か感じたり考えたりして、世の人に対しての心象や見方が少し変わる。

貧困、病、孤独など凡そ不幸として捉えられる事案にも人それぞれ違った感じ方、対し方があり、人はやはりカテゴライズやラベリングといった下らない色眼鏡で見るべきではないと、この番組を観るたび強く思う。

一見すると不幸に見えて幸せ。幸福そうに見えて不幸。人間に見えているものなんて、本当にほんの少しでしかも表層。

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「おらおらでひとりいぐも」2020年 日本

監督 沖田修一

夫に先立たれ、子どもたちは自立して少し疎遠。孤独な老後を送るおばあちゃんの話。

高齢化の進む現代。こういう生活をしている人がたくさんいるんだろうな。

たくさんいるそんな人たちも皆同じではない。