夢ねぇ。
夢という言葉は両刃の剣で、現在のダメな自分の免罪符にもなれば、ダメな自分を動けなくする呪符にもなる。さらに剣であるから、それを持つ人に他人はとやかく言えなくなる。
であるから、夢という言葉を使うときは余程慎重に考えて使わなければ、自分も他人も欺くことになる。
そんな面倒なものなら、持たなければいいじゃないかと思うが、何故か人はこの夢というのが大好きで、持たない人を持つ人よりどこか一段下に見るきらいがある。
故に、特に強く思ってもいないのに、これが僕の夢だと言い張る輩なども出てくる。
会うたびごとに夢が変わっている人もいる。思い入れの軽重はそれぞれだが、持たなくてはいけないという意識は皆一様に持っているよう。
不思議だな。と思う。生きがいもなく生きていることは罪悪とでもいうのだろうか。
そんなことはないと思う。
ただ生きている。それだけでもいいのだと思う。
幸せという形のないものを人は追い求める。形がないものだから、今自分が幸せなのかどうなのか確証がない。そこで夢の登場だ。夢がある人はない人より幸せ。
叶う人は叶わない人より幸せ。夢がない人など論外。
僕には夢などない。目標めいたものはあるけれど、夢なんて形容するほどだいそれたものでもない。それでも夢のある人に対して自分を卑下したりはしない。
幸せ同様、夢にも形などないから。
そんなものに畏まる道理がない。
大方の夢は法螺だしね。
今やらなくてはいけないことからの逃避。言い訳。先延ばし。
長生きすると、人間がひねこびるね。
素直に手放しで他人の夢を応援できた過去は遥か彼方。
目標。と言われれば素直に応援できるのだけど、夢という曖昧模糊なぼやけすぎの抽象表現は、視力の落ちた心には見えないのだよ。ってことだよ。
「劇場」 又吉直樹著。
「夢って言葉は残酷なんだな」ってフラワーカンパニーズの感情七号線の歌詞が頭に浮かぶ。
夢とそれを叶えるために必要な才能努力環境人間時の運。
様々な歯車の噛み合わない夢のもたらす、残酷な現実。
あれだけ天真爛漫だったヒロインが・・・。
大切にするべきは何だろう。
人生のプライオリティ。
それは上手くいかないときほど重要。
そんな気が。
したよ。
不一。